冨田勲研究会レポート 第1回 クリエイターからみた冨田勲 そして未来へ「大阪万博 東芝IHI館 グローバルビジョン」 

REPORT

2018915 
第1回 
冨田勲研究会 古賀政男音楽博物館1
階「けやきホール」


クリエイターからみた冨田勲
 そして未来へ

 
 色々なご縁により、私が人生で最も感動した大阪万博東芝IHI館の「光と人間たち」の音楽と映像が奇跡的に揃い、50年の時を経て再びみなさまに公開できます事を大変うれしく思います。なにより、父が一番喜んでいると思います。


父の他界後、最初にスタジオに入った時に偶然「万博70」と書いたテープを見つけ、すぐに日本コロムビア様にデジタル化してもらいました。その頃の音源をあまり残していない父ですが、この音楽にはかなり思い入れがあったのだと思います。


これを機会に「冨田勲研究会・ TOMITA information Hub 」を開催し、皆様に大阪万博の貴重な映像と共に音楽を聴いていただきたいと思いました。そして、冨田勲の志に刺激を受け、第一線で活躍されるクリエイターの皆様に、父の事を色々教えていただけたらと思いました。 


冨田勲をあまり知らない方、大阪万博に興味を持って参加された方にもぜひ知っていただけたらと思っております。本日は、私も一緒に学び、そして楽しみます。


これからもトミタサウンドが、愛してくださる皆様の心の中に生き続けてほしい。音楽のみならず、その志も次世代につながっていくことを願っています。


開催にあたりご尽力いただきました記録映画保存センター様、東芝ライテック様、日本音楽著作権協会様、そして日本コロムビアの皆様。最初に背中を押してくれた泉麻人様、ご登壇くださる皆様、技術面でご支援頂いた津田賢吾様、全てを陰ながらにまとめてくれた藤田功博様、大勢のボランティアスタッフの皆様に心より感謝いたします。


冨田勲研究会・ TOMITA information Hub 主催 妹尾理恵

 


プログラム前半
講演 「大阪万博と冨田勲、新しい時代」

1970年大阪万博の東芝IHI館「グローバルビジョン」にて上映された「光と人間たち」監督:藤久真彦 音楽:冨田勲。
この9 面マルチスクリーンによる映像から、3面の映像を記録映画保存センターの技術協力のもとデジタル化して全編が上映されました。その後、泉麻人氏、樋口真嗣氏、樋口尚文氏によるトークセッション形式の講演会が行われました。さらに開演前と休憩中には、東芝ライテック様のご協力によって、当時のパビリオン内で流されていた貴重なPR映像(音楽:冨田勲)も上映されていました。


大阪万博 東芝IHI館 「グローバル・ビジョン」について


展示の主体は空中球形劇場「グローバルビジョン」の映画であった。観客が待合スペースから直径 26メートルの昇降回転客席に入ると、客席は 5メートル50 の高さまで回転しながら上昇し、1 分間で空中球形劇場へ。この客席は定員 500 人、観客を含めた重量 300トンで、昇降には 670 馬力の油圧装置が使用された。
360 度の 9 面マルチスクリーンは、1 面の幅が上部で7メートル 50、下部で 9メートル、スクリーン全体の面積は 630 平方メートルあった。各スクリーンの真下には映写室があり、対面するスクリーンに向かって映写するという新しい映写法がとられた。
客席が上昇を始めると、映画に登場する、黒人のトランペッターが吹く口笛が聞こえ始めます。客席がのぼりつめたところで、カナダ、アメリカ、ポーランド、イタリア、ケニア、スペイン、日本などで撮影された18 分間のドキュメンタリー映画が上映されました。
観客が映像を通じて世界のあらゆる国の人たちと語り合い、未来社会の人間の幸福を“希望”をもって共に考えるメディア空間が、この「グローバルビジョン」だという発想であった。

映像「光と人間たち」監督:藤久真彦 

構成 ①海と少年(1分20秒)②自然と動物の素朴な結合(1分30秒)③三人の旅行者の記録(1分20秒)④世界は造り変えられるーダムと造船の現場からー(1分20秒)⑤より多くの点の結合へー港・駅・空港から世界へー(1分10秒)⑥点と線のモンタージュー結接点に拡がる世界の街角ー(1分10秒)⑦夜ー光と人間たちー(40秒)⑧朝、世界の眼覚め(1分)⑨三人の若者の記録 ー生きる喜びと斗いー(3分20秒)⑩何故連滞するか ー歴史の証言と回復のイメージー(2分)⑪明日に向かって歩む ー若者のエネルギー(8分40秒)


音楽 作曲:冨田勲

12チャンネル・マルチ稼働音響システム用に作られた音楽

指揮:石丸寛、演奏:読売日本交響楽団、チェイ光星(歌とエレキベース)、小室等の六文銭(歌)、北庄司欣二(ギター)、安倍圭子(マリンバ)、山川恵子(ハープ)、 石川晶グループ(打楽器・鍵盤楽器)、ミッキー吉野(ハモンドオルガン)、上原陽子(シタール)、音楽プロデューサー:野宮勲

挿入歌:三人の若者のための歌(詞:Alan Bruens、作曲:冨田勲、歌:チェイ光星)


泉麻人
1956年生まれ 慶應義塾大学卒業後、東京ニュース通信社に入社。「週刊TVガイド」「ビデオコレクション」の編集者を経てフリーに。「ポパイ」などの雑誌を中心にコラムを発表する一方、テレビに出演し コメンテーター、司会などを務める。


樋口真嗣
1965年生まれ 映画監督
平成ガメラシリーズでは特技監督。監督作品に『ローレライ』、『日本沈没』、『のぼうの城』、実写版『進撃の巨人』など。『シン・ゴジラ』では監督と特技監督を務める。  


樋口尚文
1962年生まれ 映画評論家、映画監督
「有馬稲子 わが愛と残酷の映画史」「映画のキャッチコピー学」「『昭和』の子役 もうひとつの日本映画史」「黒澤明の映画術」ほか著書多数。監督作に映画「インターミッション」、川端康成原案の映画「葬式の名人」。






プログラム後半
講演 「クリエイターからみた冨田勲 そして未来」


はじめに作曲家で冨田勲とも親交のあった栗山和樹氏より「リボンの騎士」「花の生涯」「勝海舟」を聴きながら劇伴作曲家としての冨田勲とその音楽にまつわる様々なお話を伺いました。
次に脇田玲氏からはサイエンティストとアーティストがコラボした例やご自身の作品の紹介、冨田勲が音楽に取り入れようとしたドーンコーラスなど「宇宙の音」を例にサイエンス&アートにまつわる様々なお話を伺いました。

栗山和樹
1963年生まれ 作曲家 国立音楽大学教授
NHK大河ドラマ「北条時宗」を始め「極道の妻たち~決着」、「陽炎3」、など数々の映画音楽、テレビ番組のテーマ曲、CM音楽などを作曲。


脇田玲
1974年生まれ 現代科学と現代美術を横断するアーティストとして、数値計算に基づくシミュレーションを駆使し、映像、インスタレーション、ライブ活動を展開している。Ars Electronica CenterMutekRedbull Music FestivalWRO Art Center、清春芸術村、日本科学未来館、Media Ambition Tokyo2121_DESIGN SIGHTなどで作品を展示。2016年のArs Electronica Festival では、冨田勲をオマージュしたオーディオビジュアルインスタレーションを小室哲哉とともに制作・展示して注目を集めた。2019年より慶應義塾大学 環境情報学部 学部長。



 
冨田勲研究会スタッフと出演者

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